天国の不動産
「あれ、あたしなんです」
確かに誰かに似ているとは思ってた。
正直、僕にとって戸倉有紗はその程度の認知だった。
「そう……なんだ……」
少したどたどしい返事。
いつも無愛想で喜怒哀楽がはっきりしない僕の、少しは驚いている証拠だ。
反応に物足りなさを感じながらも、弥生は続けた。
「正直この仕事をしていた以上、関わってきた人は普通の人よりものすごく多いと思ってます。家族や友達だけではなく、共演者の方や、裏方さん、ファンの方々を入れれば、深く関わってきた人たちの記憶がなくなる確率はかなり低いと思う」
弥生は自分の足先をじっと見つめながら、生前を思い出しているようだった。
「でも……」