天国の不動産
「君は、何を見たいの?」
今を駆け巡る人気女優の死は、全国のトップニュースになっているはず。
弥生はそんな光景を見たいわけではないことくらい、無責任な湊にも分かる。
しかし、その言葉が彼女に踏み込む言葉だとは、そこまでは考えられていなかった。
弥生は困った顔を見せながら、眉を下げて笑った。
「見たいんじゃないの。謝りたい人がいるの。それだけ……」
「謝りたい?」
考えてもみなかった。
自分のためではなく、誰かのために会いに行くことを。
「私がいなくなって、彼は相当大変だと思うの。後始末を、全部押し付けてしまって……」
顔を顰めて、苦しそうに話す。
「それは……恋人?」
芸能人の恋愛事情。
壊れ物を触るように恐る恐る聞いた。
弥生は人差し指を立て、口元に当てる。
「内緒だよ」
語尾にハートマークが見えた気がした。
照れて笑う弥生を可愛いと思ってしまった。
これは、スキャンダルだ。