天国の不動産
緑
どれくらい経っただろう。
きっとあっちに置いてきた家族や友人、彼女らは1週間くらい僕のいない世界を過ごしただろうか。
天国は変わらない心地よい風が吹いており、気持ちが良かった。
しかし、それには気付けないらしい。
落ち着けず門と不動産を行ったり来たり、まだ気持ちは定まらない。
草原の草をちぎっては、指先で弄る。
時間の感覚もあまりないため、退屈だとも感じない。
それでも何故だか誰かを待っている気分になっていた。
その時、不動産から1人の老人が腰を曲げて出てきた。
ゆっくりゆっくり、一歩ずつ。
当たりを見回し、自分が一番良いと感じる場所を選ぶと、これまたゆっくりと腰を下ろした。
少しだけ笑顔の清々しい表情をしている。
不動産から出てきたということは死んだばかりなのだろう。
なぜそんな表情が出来るのか、自分と比較し、苛立ちさえ覚えた。
そして顰め面で下を向いた。