天国の不動産
だが、何に恐れていたのか、心配することは何もなかった。
おじいさんは変わらぬ表情で「あぁ、聞いたよ」と返事をした。
「これから、どうするのか決めました?」
「決めたよ」
「あの……」
僕の迷った声をおじいさんはしっかりと分かっていた。
それを全て分かって、にっこりと笑って見せた。
「兄ちゃんは、人生楽しかった?」
「え……?」
「誰と出会った?誰と笑った?誰と、幸せだった?」
どれも答えが出ずに息をつまらせてしまうような質問。
「僕には、今が若すぎたみたい・・・・です」
下を向いてしまう僕に、おじいさんは声を高く上げて笑った。