天国の不動産
「そんなことはない。それは誰だって同じ。それが、君の限られた時間。“これから出会ったかもしれない”は、天国に来てまで考えることではない。ここは、生きていた中で死んでも大切にしたいものを選ぶところ。君の大切はなんだった?」
このおじいさんはきっと、大切なものがはっきりしているのだろう。
人に興味はなく、人の感情を察したり、理解したりすることをあまりしてこなかった僕でも分かった。
話し方に、自信が入っていた。
自分は……と考えてみるも、やはり答えは浮かばなかった。
自分より半世紀以上も生きれた人に言われても、納得はいかなかった。
「おじいさんは、これからどうするんですか?」
僕の質問に、おじいさんは目を閉じた。
「待つよ。ばあさんがここに来るのを」
「それが、おじいさんの大切な人……」
当たり前か……
小さくため息をつくしかなかった。