天国の不動産
「でもね」
とおじいさんはゆっくりと話を続けた。
「ばあさんがここに来た時は、もう私のことなんて忘れているかもしれない。もし今会いに行って、私の記憶がばあさんの中から消えても、同じこと。人の記憶なんて、曖昧で約束できないものだよ」
「だったら、会いに行ったらどうですか?会いたいんですよね?」
僕には分からなかった。
どうせ忘れられるなら、会いたい今会いに行くべきだろう。
それが=してしまうことが、子どもであるとは分かっていた。
だけど、どうしても分からなかった。
「ばあさんを待って、天国でまた1から恋をする」
そういうおじいさんは、まるで恋を覚えたての青年に見えた。
驚く僕を置いてけぼりにして、おじいさんは嬉しそうに口を開く。