天国の不動産
振り向いた彼女は驚いていた。
天国にきた人たちと話をすることが当たり前になった僕だったが、来たばかりの彼女はただ知らない人に呼び止められたのだから。
それに加え、天国で他の死者と話ができるとは思いもしなかった。
しかし、彼女の場合は周りも見えずに進んでいたため、そこが1番の原因だったかもしれない。
「な、なんでしょうか」
それでも落ち着きを必死に見せた声で、返事をしてくれた。
「突然呼び止めてしまいすみません……あなたがあまりにも真っ直ぐに門へ行くものだから……」
慣れたものだ。
人に話しかけることに。
人見知りだったとは思えない程、流暢に言葉は出てきた。
「生界に降りるんですか……?」
「そのつもりです……」
彼女の警戒した様子には気付いていたが、僕は言葉を止められなかった。