天国の不動産
「でもね、私の身体じゃ出産には耐えられないかもしれないって言われてて、それでも私は産む決断をした。
かもしれないってだけで、お腹の赤ちゃんを殺すことができなかったの。いざ出産したらやっぱりダメで……
目が覚めたらすぐにここは天国だって分かった。お医者さんって正しいんだなって。
生界に行く条件がいくらあったって、赤ちゃんをひと目でも見たい気持ちは変わらない。
赤ちゃんと、赤ちゃんを抱く旦那に会ってからじゃないと、生まれ変わりなんて、絶対に、後悔する。
産んだことに後悔はないけど、赤ちゃんに会えなかったことには後悔してるから」
この人は死ぬ覚悟があったんだ。覚悟もなく突然死んでしまった自分とは違う。
そう思うことがどれだけ惨めなのかは分かっていた。
でも、僕はその考えをやめられなかった。
「生界に行くこと悩んでるみたいだけど、君は今、後悔してることはないの?」