天国の不動産



生界の夜が明けた。




空なのか分からない空を見上げていた僕を、門番が呼んでいる。




待ってましたと言わんばかりの気持ちだったが、緊張とちょっとだけ格好つけたくなって、必死に冷静を保ちながら門まで歩く。



「逢坂湊さん、これより生界へ通じる道になります。目的は様子を見るだけと伺っておりますが、間違いありませんか?」




業務的のような、そうでないような、門番の言葉にごくりと唾を飲んだ。



「1つ注意事項がありまして、何かの拍子に復讐心が芽生えたり、ちょっとした悪戯心から自分でも気付かぬうちに悪霊になりかねないので、お気を付けてください。


時間制限は12時間です。現在朝の6時ですので、18時になりますと強制的に天国へ連れ戻されます。


1度生界へ行くことにつき、逢坂湊さんが生前に関わってきた方の中から1人、あなたに関する記憶が全て抜け落ちます。それは生界にいる間に見ていれば気付くかもしれませんし、もし分からなければ天国に戻って、不動産の山下より調べてもらうことも出来ますので」





やはり門番は業務的だった。




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