天国の不動産
「それでは5月15日、死後1週間の生界へ。行ってらっしゃいませ」
門番の台本のような台詞で見送られ、門は開いた。
門をくぐるのは不思議な感覚だった。
どこへ着くのか分からないのに、くぐってしまえばそこは見覚えのある景色だった。
まだ明け方にも関わらず車が頻回に行き交う。
道路両脇に並ぶ店はまだ暗く開いていない。
歩く人はまだ少なかった。
幽霊となった僕が立つ横のガードレールは少し凹み、そこにはたくさんの花が置かれていた。
「僕の……死んだ場所……」
家から駅までの通り道。
明らかに数日前事故があった雰囲気。
あの日のこの道以降の記憶がない。
一瞬で、自分が事故に遭った場所だと気付けた。
思わずポケットに入っているスマホを取り出す。
時刻は変わらず12時21分。
彼女からきていた「おはようございます。遅刻は厳禁です」の連絡を表示した。