天国の不動産
門番への目的は「生界の様子を見ること」と伝えていたが、詳しくは自分の死を認めることと、生きていた時の後悔を、後悔のままにしておかないこと。
とりあえず湊は、あの日の続きを歩き出した。
ウォークマンは持っていない。
きっとトラックとぶつかった時に落としたのだろう。
ポケットに入っていたスマホだけ天国に持っていけたようだ。
待ち合わせは、駅前のアイスクリーム屋さん。
時計が止まっていることはわかっているが、何度もスマホを開いて見てしまう。
「もしかしたら」と儚い期待を持ってしまう。
駅に着いた頃には門番が言っていた「午前6時」は忘れていた。
まだ開店前でシャッターが下りているアイスクリーム屋さんにがっかりした。