天国の不動産
通勤通学で駅を利用する人がぱらぱらと改札を抜けていく。
アイスクリーム屋の前に、彼女は待ってはいなかった。
「当たり前か・・・・」
何度目かのスマホを最後に開き、自分に呆れてポケットに封印した。
街は変わらない風景、人の流れ、時間の進み。
そこは僕の知ってる街だった。
「死んだって何も変わらないじゃん」
少し淋しそうに呟いてみせるが、その声は誰にも届かない。
僕は黙って来た道を引き返した。
駅と大好きなアイスクリーム屋さんに背を向けて、ガードレールに添えられた花も通り過ぎる。
行き先は自分の家。
自分が死んだことを自覚するには、一番手っ取り早かった。