天国の不動産
家まではそんなに遠くないはず。
幽霊の体で生界を歩き回るのは、どうやら大変らしい。
体力もエネルギーもないはずなのに、ひどく疲労を感じながら、なんとか玄関までたどり着いた時には既に7時を過ぎていた。
久しぶりの自分の家。
開けて入っても悪いことなどなんにもないはず。
しかし、何故か少し躊躇ってしまう。
もういないはずの存在になっている自分を受け入れがたかった。
この時間、いつもだったら家族は起きている頃。
ここは、自分の家。
入っても何も問題はない。
何度もそう心で唱え、玄関のドアノブに手をかける。
ゴクリと唾を飲み、緊張を誤魔化してみせた。