天国の不動産
とりあえず、聞いてすぐに思い出せるような名前ではないことは明らか。
「情報によれば、逢坂さんの中学の時の同級生のようですね」
「中学…」
あまり人と関わってこなかった僕としては、中学の同級生という情報だけで思い出すのには時間がかかった。
「そういえば、隣のクラスにいたかもしれない…1度も喋ったことないけど…そういう人の記憶も消えたりするんだ」
「もちろんです。あなたのことを認識している方、どこかの記憶の片隅にでもあなたがいれば、その人は対象になります」
「へぇ…」
「さて、生界にも行けたことですし、生まれ変わりを希望しますか?」
「生まれ変わり…」
正直、今はそれどころではない。
生まれ変わるもなにも、自分が生きていた世界で、自分の大切な人が大変なことになっているのだ。
1人だけのうのうと生まれ変わっている場合ではなかった。