天国の不動産
「自分がどうしたいかは…分からないけど…残された人たちが幸せに生きていって欲しいだけです」
自分の気持ちにも、言動にも自信なんてない。僕は俯いた顔を上げることが出来なかった。
「1つ、お教えしましょう」
言って山下は人差し指を突き出した。
「生まれ変わりにはルールがあります。それは、前世の記憶を一つだけ、後世へ持っていくことができるということです。それも、ご自身の意思で選ぶことができます」
「前世の記憶…?それは、今の僕も、前世の記憶を持って生まれたってこと?」
「そうです。命あるもの全てそうなっています」
「テレビとかで、たまにそういった話は聞くけど…僕には前世の記憶なんて…」
「記憶というものは、誰かに伝えることによって、忘れないものなんです。前世の記憶を持って生まれても、赤ん坊はすぐには喋れない。人は誰かに伝えて、記憶を保てる。記憶がないのは、伝える前に忘れてしまっているだけです」