天国の不動産
「即死だったので、ぶつかったことすら気付けなかったのでしょう。自分の死に気付かない方なんてたくさんいます。大丈夫です」
何が大丈夫なのかさっぱりだが、僕はぎこちなく頷くしかなかった。
「それで、生まれ変わりはどうされますか?希望しますか?」
「生まれ変わり……」
そんなことを言われても、今この瞬間自分が死んだことを告げられたのに、生まれ変わりの希望の有無について二つ返事で出来るわけがない。
しかし山下は淡々と説明を続ける。
「先程も説明したように、ここは天国の不動産です。次にあなたが生活する場、生まれ変わり先を探すお手伝いをしております。ご希望であれば手続きまでお付き合いさせていただきます」
そもそも死んだことさえ受け入れられていないというのに、生まれ変わりのことなど考えられるはずがなかった。
「あの……僕が生きてた世界は行けないんですか?」
辛うじて出た言葉だった。
「急に死んだなんて言われても、すぐに受け入れられないというか…自分のいない世界を見ないと信じられないというか…」
生まれ変わりよりも何よりも、残された人たちに、残してきてしまった人たちに会いたいと、自分が死んでしまったことは、それを見て受け入れようと思ったのだ。