天国の不動産


どうしたら葵を救うことが出来るだろう。


時間が解決してくれるだろうか。


自分じゃない誰かが葵を助けてくれるだろうか。


誰かと出会い、自分のことは過去の存在へと変わり、新しい道を選ぶことが出来るだろうか。


それにはどのくらいの時間が掛かるのだろう。

立ち直るまで、大学には行けるだろうか。

きちんと卒業出来るだろうか。

これからの人生、遅れてしまわないだろうか。


生きている間、こんなにも彼女のことを考えたことがあっただろうか。

死んでからじゃ遅いという言葉を身をもって実感した。



自分が死ななければ、彼女とあの日約束していなければ、彼女と交際しなければ、彼女と出会わなければ、彼女はこんなに苦しむことはなかった。


いっそのこと、忘れられた方が彼女のためなのではないか。



嫌な考えが頭の中を巡る。

死んだ自分が唯一出来ること。



''生界へ行くと必ず誰かの記憶がなくなる''




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