天国の不動産




自分のことを忘れてしまった中学の時の同級生の中橋円は、今どうしているだろう。




僕のいない世界線で、もう二度と僕を思い出すことはなくて、だけどそれは彼女にとってこれから歩んでいく人生で何ら支障も出なくて、何ら関係なくて。




僕を忘れてしまっても、困る人間はきっと誰一人もいない。





僕はそういう生き方をしてきたし、そもそも世界はきっとそう出来ている。




いなければいないで世界は成り立っていることに、死んでから気付かされるのは、なんだか癪だった。




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