天国の不動産
「やっぱり、こんな理由じゃダメですか?」
恐る恐る聞く僕に、門番は首を横に振った。
「いえ。こちらとしては悪霊にならないかどうかを判断するために理由をお聞きしているので、特に止める権限はありません。ですが、今回生界へ降りたことによって、彼女さんから逢坂さんの記憶が消えるかどうかは分かりませんが…」
「それは分かっています。どれだけ時間をかけてでも、今はそうしたいんで…」
言って俯くと少しだけ汚れた僕のスニーカーが目に入った。
彼女が誕生日にプレゼントしてくれたものだ。
何か言いたそうに、あえて口を紡いで、門番は門を開いた。
「分かりました。制限時間は前回と同じで12時間、午後19時までとなっています。では、5月16日。死後8日後の世界へいってらっしゃいませ」