天国の不動産




門をくぐると、やっぱりそこは見覚えのある道だった。




昨日と変わらず少しだけへこんだガードレールに、添えられたたくさんの花。




昨日葵は、あの日約束した12時半にここに来ていた。




きっと今はまだ家で寝ているだろう。




運良く僕の記憶が既に消えていればいいのに。




そんな儚い希望を持ちつつ、葵の家へと向かった。




葵の家は駅を挟んだ反対側にある、大きなマンション。




同じ大学に行こうと約束し、一緒に勉強を頑張った図書館のすぐ近く。




高校の時はそこの図書館で閉館まで勉強し、帰りに公園でアイスを半分こにして食べて帰っていた。





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