天国の不動産
「お盆ではないのであまり生者に会いに行くのはどうかと……行けないことはないですが、私はただの不動産ですので、そのお手伝いはできません」
山下は渋い顔をしながら言う。
しかし、僕には「行けないことはない」という部分しか聞けなかった。
「どうやって行けますか?」
僕の反応に、山下の渋い顔がさらに濃くなった。
「ここを出て正面をまっすぐ行ったところに門があります。小さくですがここからでも見えますよ。そこに門番がいるのでその方に頼めば行けないことはないですが……」
山下の声のトーンがだんだん落ちていることなど、気にもならなかった。
僕はすぐさま立ち上がり、指さす門の方を見た。
確かに遠くに小さく見えた。
「でも……」
山下が続ける言葉にようやくそれがあまり良くないことに気付いた。
顔を顰め、山下が話し出すのを待った。