天国の不動産
「湊さんは俺も可愛がってもらってたし。姉ちゃんにとってどれだけ大切だったか分かるから…」
「そうね。時間はかかるかもしれないけど、今はそっとしておきましょう」
「うん…」
沈鬱な無音が数秒続き、「行ってきます」と力ない声で弟は家を出た。
葵の弟までもが、僕の死を悲しんでいることに驚いた。
あまり人とは関わってきていないのだと思っていた。
人より友達は少ないし、一定の人としか話をしてこなかった。
クラスの中心にいるような人より、遥かにコミュニケーション不足だとは思う。
だけど、数えてみれば、こんな僕でも、自分の死を悲しんでくれる程関わりを持った人はいたのかもしれない。