天国の不動産
どれくらい経っただろう。
物音ひとつしない葵の部屋の前に、僕は座っていた。
突然、扉が開いた。
出てきたのはもちろん葵で、僕は驚いて立ち上がった。
正気のない葵の顔。
胸が痛む。
ちらっと見えた葵の部屋は真っ暗で、換気もされていない、もわっとした空気が漂っていた。
ということは、雨戸かカーテンが閉められているため、ベランダからも葵の様子は見れないということ。
どうやら僕の明日の計画は一気に崩れたようだ。
ちょっとだけ落胆しつつ、小さく丸まった葵の背中を追いかける。