天国の不動産
玄関へと向かう葵がやりたいことが何となく分かった。
時計を確認すると、やっぱり時刻は12時をさしていた。
約束の12時半。
事故現場に行くつもりだ。
ぎゅーっと胸が痛む。
葵は毎日これを続ける気なのだろうか。
早くどうにかしないと。
葵はあの日から動けずにいる。
こんなに近くにいるのに救えないもどかしさが、僕の胸を更に締め付けていく。
葵は駅前の花屋で足を止めた。
「いらっしゃいませ」
花屋のおばちゃんが元気よく挨拶をする。
小さい頃からよく通る花屋だったものだから、会うたび「湊くん元気ー?」と聞いてくるものだから、少しずつ年齢を重ねるたび、鬱陶しくなっていっていた。