天国の不動産




「あら葵ちゃんここ最近毎日お花買いに来てくれるわね」



ニコニコしながらおばちゃんはいつも通り元気に葵へ話しかける。



が、何となく違和感がある。




聞こえているのか聞こえていないのか、葵は深く俯き、黙ったまま。




そして白いサマースイトピーを指さして「これください」と聞こえるか聞こえないかの小さな声。




何かを察したようにおばちゃんもそれ以上は話しかけず、業務的に淡々と花を売った。




「はい。気をつけてね」




心配そうに葵を見送っているが、なんだろうこの違和感は。




花屋から事故現場までは、見えはしないもののすぐ近く。




事故当日はかなりの騒ぎだっただろうし、誰かが連絡しなくとも、おばちゃんの耳には入っていたはず。





このおばちゃんなら、店を飛び出して野次馬のように現場へ駆けつけてもおかしくはない。





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