天国の不動産
日が沈んだ頃、葵の弟が駆け寄ってきた。
「姉ちゃん!やっぱりここにいた」
僕たちが卒業した高校の制服を着ている。
きっとそれは僕があげたお下がりだろう。
葵と手を繋いで入れていたポケットの部分が少しだけ広がって寄れている。
「お母さんが、姉ちゃん多分ここにいるから、帰りに見てきてって言われた。今日も花添えたの?もうここお花畑だね」
返事もしない葵に、弟はたくさん話しかける。
「帰ろっか」
弟が葵の手を引く。
昨日とまるで変わらない。
中身がぽっかりと抜け落ちた葵は、何も分からない子どものように連れられていく。