天国の不動産
人の記憶というものは、なんてあやふやなものなのだろう。
こんなにもあやふやなものなのに、葵は一向に僕のことを忘れることなく、1年が過ぎようとしていた。
母親が病院に連れていってはいるようだが、葵は未だ僕の写真を見ては毎日のように泣いていた。
ただ1日12時間葵の様子を見るだけしか出来なくて、それすらも気づいてもらえなくて、何も出来ないもどかしさも続く。
いつまで続けたら良いのだろう。
運よく家族や直前まで連絡を取っていた友人の記憶は消えていないようだが、葵の記憶も消えない。