天国の不動産




ただ一人の大切な人のために、僕がいた世界は消えていく。




僕が勝手にやったこと。



僕が勝手に望んだこと。


あと何年経てば、葵から僕の記憶は消えるのだろう。



あと何人の記憶が消えれば、葵は僕のことを忘れられるのだろう。




そんなことを思いながら、今日も僕は葵のために生界へ降りる。




今日の葵は母親と通院のよう。




持続性複雑死別障害と診断された葵は、焦点が合わなかったり、乖離したりと、症状は重症。




支援なしの社会生活困難とまで言われ、未だ大学も休学中。





一緒に頑張って勉強して入学した大学。




僕がいなくなってしまったら、通う意味もないのだと言う。



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