天国の不動産
僕が死んで初めての高校の同窓会では、僕の話題は一切出なかった。
僕の話題を出してくれそうな人はもう、僕のことを覚えていない。
大学生だった僕も生きていれば卒業している。
もう大学時代に関わった友人に僕のことを知っている人はいないだろう。
休学していた葵は大学をやめてしまった。
葵がなぜ大学を辞めてしまったのか、理解している人はいないだろう。
葵よりも先に、葵の父親から僕の記憶が消えてしまった。
父親は誰を想って葵が未だに苦しんでいるのかわかっていない。
2年前から葵はアルバイトを始めた。
スモールステップで病院の担当医が言う通り、少しずつシフトを増やしていった。