天国の不動産
「か、考えます……」
辛うじて出た言葉。
重い腰を上げ、ようやく椅子から立ち上がったところで不動産を出た。
遠くには現実世界へ繋がっているだろう門が見える。
そしてその手前に、先程僕より先に不動産にいた女性が草原の中座り込んでいた。
考えると出たものの、どこにいていいのか、何をどう考えていいのか分からなくなっている。
状況も気持ちも彼女と同じであることを祈る。
彼女がそこにいることは、そんな僕の救いでもあり、逃げでもあった。
気まずく彼女の横をゆっくりと通り過ぎる。
そんな僕を彼女が呼び止めるのは、予想の範疇だった。
「あの……!」
勢い任せに出た声。
彼女はまるでそれが間違いだったかのように、一歩引いてみせた。