天国の不動産
もう、僕だけが葵に依存していた。
関わってきた人たちが僕のことを忘れていってしまった世界で、僕が僕を忘れてしまうのがとても怖かった。
きっと、生まれ変わりってそういうこと。
早くやめないと、生界に降りるのをやめないと。
そう思いながらも葵にすがって、葵の記憶が消えるのを願ったふりをして、本当はそれも怖くて。
ただ死を受け入れられず、立ち止まっていただけ。
ただ、成仏できずに彷徨っているだけ。
そこまで分かっておきながら、僕は今日も門の前にいた。