天国の不動産



4年前と変わらず門番は言う。



「死後4年後と8日後の世界へ行ってらっしゃいませ」




普段ならここで門をくぐれば、目の前は生界の事故現場。




僕は足が動かなかった。




「どうされました?生界へ降りるのではないのですか?」




なかなか門をくぐらない僕に、門番は言う。




「そろそろやめないとっては思っているんです…葵を救いたくて始めたことだけど、葵はもう前に進んでいる。ずっとここに居たがっているのは僕なんです。僕だけが、生界にすがっているんです」




門番は少しだけ困った顔をして見せた。




「何度も言いますが、私は悪霊になりうる魂のみしか引き止めることは出来ません。あなたは確かに成仏できずに彷徨っている魂ですが、悪霊ではありません。

きっとこれから先も悪霊になることはないでしょう。

ただ自分が過ごしてきた場所が好きで、一緒に過ごした仲間が好きで、現状を変えたくなくて、4年経っても死を認められない、淋しがりの魂です」



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