先生、あのね
7春
4つの季節を迎え、私は無事第一志望の大学に合格した。

一時予備校にたったうわさは、皆めいめいのするべきことがあるため、すぐ鎮静化した。

久方が強く否定した分、一花をうわさと結びつける人はすぐにいなくなった。

一花自身も久方に質問をしに行くことを避けて、色々な講師に質問するようにした。



一花の恋はというと、実は進展をみせていた。

それは一月の試験直前、
久方は予想問題付きの、励ましの言葉を書いたプリントを一人ずつ手渡した。

もちろん一花にも。



そしてそのプリントには目を凝らさないと見えないような鉛筆書きのメモ。

自習室の座席の番号だった。

授業は自由席だが、自習室は管理のため、一席一席にナンバーがついている。



一花はその日、授業が終わると一目散に自習室へ向かった。

そして、何事もないようにその数字の席を取り、ゆっくりと着席した。

ノートと、参考書、過去問、筆記用具を何気なくかばんから取り出しながら、
机の中を探った。

そこにあったのは、おそらくお守り。

一花はノートと参考書で器用に挟んで、カバンに入れた。




自習時間いっぱいをつかうと、いつものように帰り支度をした。

本と本の間に挟まれた、お守りを見て、思わず涙が出そうになる。


ー先生!!


先生に会いに行きたい。

早く、先生に会いたいよ。


受験なんて早く終わって。先生のそばに行きたい。



家に帰って、お守りを握りしめて泣いた。

(ごめんなさい、先生。先生に変なうわさ立っちゃった)

(先生、大好き。離れても好き)


早く先生と話したかった。


そんな風に、私と先生は細い糸で繋がったのだった。









< 11 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop