先生、あのね
4 勇気
先生と話すため、一花は面談カードを提出して授業後の先生を待った。

面談ブースの中で小さくリハーサルを繰り返す一花。


(先生好きです、付き合って下さい)


(先生好きです、付き合って下さい)


大事な言葉を正確に発するため、心の中でも何十回と練習をしてきた。


そこで
「おー、待たせたな、澤口」

と言いながら面談ブースに久方が顔を出した。





「先生っ!!」

身を乗り出すような体勢になる。

「お?何だ、何だ?」

「とにかく座ろう、な。話はゆっくり聞くよ」


心がとろけそうな笑顔に一花はすとんと椅子に腰かけた。


「澤口は最近いいよ、模試でも結果が出ている。何か気になることがあるか?」


「先生、あのね」








「私、先生のことが好き。先生私と付きあ……」



ばっと口をふさがれた。


「もごもごっ(せんせいっ)」



久方は周りをきょろきょろと見回しつつ、静かにするように言った。



そしていつもの笑顔で、そう、一花の大好きな笑顔で、


それは帰りに聞くよと、自習に行くよううながした。




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