獄卒少女にご用心!
微塵も悪く思ってなさそうな笑顔に背を向けて、若い男は炉辺の毬を拾うと、少女に渡した。
「どうもありがと。…それに、レディに年齢を聞くなんて、紳士のすることじゃないわ。まだお子様ね。」
こいつ、結構根に持つな。と胸中で呟きながらも、若い男はにやりと笑ってみせる。
「んじゃ、せいぜいレディらしく大人しく遊んでろよ、ガキ。通報されないようにな。」
「あなたも、せっかくのハンサムがそんな貧相な…寝間着みたいな恰好で出歩くなんて、たしなみがなってないわ。」
「うっせー、どっかの馬鹿が俺の服持ってったんだよ。それに、これはのんびりするときの立派なたしなみだ。
―――そんじゃな、ガキ。俺はそろそろ帰るから。」
いまだ子ども扱いされ、「ガキじゃない、レディ!」と頬を膨らませながら言う少女に、「じゃあな。」とビニール袋とは反対の手を上げた男は、立ち去ろうとしたが―――不意に振り返った。
そして、パタパタ、とスリッパのつま先で地面を打ち付ける。
「そっちこそ、レディだってんなら大事な『たしなみ』忘れたまま、こんな時間に出歩くんじゃねーよ。
――――影、ついてねーぞ。」
少女が下駄を履いた足元を見やると、地面にはあるべき物がない。
ただ宙にぽっかりと、手に持った毬の丸い形の黒だけが浮かんでいる。
「あらま、私ったら。」
すぐさま、足元から伸びた影が、地面にもう1人の少女を作り上げる。
その出来栄えに満足げに微笑みながら、顔を上げると男の姿はもう、無い。
「……また会えるかしらね、獄卒のお兄さん。」
再び地面に毬をつくと、少女は小声で歌いだす。
「あやかし潜めく真夜中に~リンリンリン、と鈴が鳴る~♪」
「どうもありがと。…それに、レディに年齢を聞くなんて、紳士のすることじゃないわ。まだお子様ね。」
こいつ、結構根に持つな。と胸中で呟きながらも、若い男はにやりと笑ってみせる。
「んじゃ、せいぜいレディらしく大人しく遊んでろよ、ガキ。通報されないようにな。」
「あなたも、せっかくのハンサムがそんな貧相な…寝間着みたいな恰好で出歩くなんて、たしなみがなってないわ。」
「うっせー、どっかの馬鹿が俺の服持ってったんだよ。それに、これはのんびりするときの立派なたしなみだ。
―――そんじゃな、ガキ。俺はそろそろ帰るから。」
いまだ子ども扱いされ、「ガキじゃない、レディ!」と頬を膨らませながら言う少女に、「じゃあな。」とビニール袋とは反対の手を上げた男は、立ち去ろうとしたが―――不意に振り返った。
そして、パタパタ、とスリッパのつま先で地面を打ち付ける。
「そっちこそ、レディだってんなら大事な『たしなみ』忘れたまま、こんな時間に出歩くんじゃねーよ。
――――影、ついてねーぞ。」
少女が下駄を履いた足元を見やると、地面にはあるべき物がない。
ただ宙にぽっかりと、手に持った毬の丸い形の黒だけが浮かんでいる。
「あらま、私ったら。」
すぐさま、足元から伸びた影が、地面にもう1人の少女を作り上げる。
その出来栄えに満足げに微笑みながら、顔を上げると男の姿はもう、無い。
「……また会えるかしらね、獄卒のお兄さん。」
再び地面に毬をつくと、少女は小声で歌いだす。
「あやかし潜めく真夜中に~リンリンリン、と鈴が鳴る~♪」