memory〜紅い蝶と私の記憶〜
「星南。お前はここに隠れてろ」


「え?!」


私だけ?!



「敵の目的がわからない以上、下手に動くのは危険だ。…星南が目的かもしれねぇからな」


お兄ちゃんの言いたいことはわかる。


私はケンカもできない。


ただの姫なんだ。


だけどっ…私だけ隠れるなんてっ。


「だいじょーぶ!僕たちが負けることはないから」


「星南は自分のことだけを考えるっす!」


「心配なのはわかりますが、僕たちはそこら辺の不良とは違いますから。大丈夫ですよ」


みんなっ…。


「っうん。わかった!無茶しないでね…」


私の言葉に、みんなは笑顔で頷く。


ただそれだけ。


それだけなのに、みんなの笑顔が私を安心させてくれる。


「んじゃ、行きますか!」


「「はい!」」


──パタン。


静かに扉が閉まる。


その音に、糸が切れたかのようにソファーに座り込む。


無傷で帰ってきてなんて、そんなことは言わないから。


どうか…っ、無事でいてっ!





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