memory〜紅い蝶と私の記憶〜
そうだよね、怖がってばかりじゃダメだもんね。


ずっとこのままってわけにもいかないんだから。


「紅蝶のみなさん、私のこと教えてください」


返事はなかったけど、優しく微笑んだのが答えなんだろう。


ゆっくりと築路が口を開いた。


「星南はすごく明るくて、その場にいるだけで暗い雰囲気も吹き飛ばすような人だった」


「俺たちは小学生のときに知り合ったんや」


「僕たちはもっと前から知り合いだったんだけど、お互いにいろいろと抱えててね〜」


「それを取り除き、みんなで笑顔で過ごすきっかけをくれたのが星南だったんだよ〜」


すごく懐かしそうに、愛おしそうに、大切な思い出を語る紅蝶。


本当にそれは私なのか。


それがすごく疑問でしかない。


だって私は暗い雰囲気を吹き飛ばすような明るい性格じゃない。


みんなの抱えていたものを取り除いた?


他人の問題に首を突っ込めるほど器用でもない。


話を聞く度に、〝本当の私〟から〝私〟が遠ざかっていく。









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