memory〜紅い蝶と私の記憶〜
「…星南はさ、今1番会いたいのは誰なんだ?」


今1番…?


頭に浮かぶのはなぜか築路で。


それを消すように頭を振る。


「じゃあ、質問を変える。1番最初に頭に浮かぶのは?」


「…築路」


誤魔化そうと思えば出来た。


だけどそうしなかったのは、お兄ちゃんが真剣な顔をしてるから。


お兄ちゃんが真剣なのに、私が真剣に返さなくてどうする?


ダメでしょ?


「もう気づいてるんだろ?」


〝何が〟とは聞かない。


だって何となくわかったから。


「…紅蝶が記憶を失う前の私の知り合いで、築路はそのメンバーの中でも1番私と身近にいた人…」


「俺も薄々そうじゃないかって思ってたんだ。ここを訪ねてくるのは全員だが、築路は必ず1人でくるし。何より…」


「お兄ちゃん…?」


「星南を見る築路の目は誰よりも優しかったからな」













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