memory〜紅い蝶と私の記憶〜

忘れてごめんね

「星南っ。大丈夫か?」


一気に記憶を思い出したからか、額や手には汗が滲み出ていた。


だけどそれは後でもいい。


今はこの不安そうな顔を笑顔に変えたい。


「…つき君」


汗で薄ら濡れてしまった前髪をかきあげ、ニコリと微笑む。


「ただいま」


〝つき君〟


それは彼女である私しか使わないつき君の愛称。


ぎゅっと抱きしめると、震える大きな手が優しく包み込んでくれる。


「おか、えりっ」


ああ、やっと私はこの腕の中に帰ってくることができたっ。


「つき君、いろいろ不安にさせてごめん」


「戻ってきてくれた。それだけでいい。けど…」


ん?けど?


顔をあげると、どこか不安そうな顔をしているつき君と目が合う。









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