memory〜紅い蝶と私の記憶〜
「…星南」


名前を呼ばれ、顔を上げるとかっこいい男の人がいた。


「…えっと」


「俺は星稀(セイキ)。星南の2つ上の兄だ」


私のお兄ちゃん?


じゃあ、あの綺麗な人は私のお母さん?


「先生が念のために今日一日は入院しないといけないんだって。明日には退院は出来るらしいけど」


明日には退院…。


見た感じ擦り傷ばかりみたいだし。


念のためというのは、きっとこの頭の傷のこと。


「星南はね、高校入学と同時に1人暮しをしていたんだ」


私が1人暮し?


…料理や洗濯出来たのかな?


「高校ももちろん、1人暮しをしていた家の近く。だけど今の状態の星南を1人にさせるわけにはいかないから、明日からは家に戻ることになるけどいい?」


「…うん」


「よし。学校も、俺の通う学校に転校することになるけど…」


転校か…。


記憶のない私が前の学校に通ってても辛いだけだ。


名前も顔もわからないんだから。


「いいよ。お兄ちゃんの学校に通う」


「ん、そっか」


そう言ってお兄ちゃんは、嬉しそうに私の頭をくしゃくしゃと撫でた。



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