memory〜紅い蝶と私の記憶〜
「私は事故にあって記憶を失い、家族の元へと帰ってきた。…向こうにもいたはずの友達に何も言えずに」


「そ、それはっ!」


「うん、仕方ないことだよね」


わかってるよ、どうしようもないことだって。


記憶を失っていたのだし、家族の元へと帰るのが当たり前。


だけどね?


「たまに思い出す記憶たちの私はすごく楽しそうなの」


「っ…」


私だけじゃない。


顔も、名前もわからない4人の男の子たち。


顔は思い出せないけど…何となく、本当に何となくだけど、みんな幸せそうだったんだ。


幸せそうで、愛おしい。


そんな想いがすごく伝わってくるほどに、大切にし、大切にされていた。


「急にいなくなった私を、探してくれているんじゃないか。再会した時に何て言えばいいのか。ずっと…考えていた」


記憶がない私を、記憶があった時のように接してくれるか不安だった。







< 96 / 344 >

この作品をシェア

pagetop