短いぼくの人生の感想
※僕※
「多分、俺の言葉のせいなんだろ?」
僕は、彼を卑怯だと思った。
そんな表情をされたら、そんなに悲しそうにされたら、僕はどうすればいい?
「そうだよ、お前のせいだ」
「ごめん」
「諦めようとしたのに―――。どうして、来たんだよ?」
「ごめん」
僕は溜まりすぎた涙を拭った。
―――やっぱり彼は泣いていて、それでいて笑っていた。
「笑わないで」
「ごめん」
ベットの上で男2人で泣いていて、何だか馬鹿みたいだった。
馬鹿みたい、いいや僕等は馬鹿だ。
「溢れるなら、零れるなら、この僕がその涙を飲み干すよ」
「うん」
「しょっぱいのはちょっと辛いな、だって僕甘党だし」
「うん」
「だから、お前の甘い愛が欲しいから」
「うん」
何となく、僕は彼の背中に腕を回した。
何となく、彼は僕の背中に腕を回した。
もう泣いているのは隠す必要がなくなって、僕は歯の隙間から漏れるしゃくり声をそのまま放置した。
彼はいい匂いがした、何の香りだろう。
分からないけど、僕はその匂いを名一杯吸い込む。
彼は温かかった、何でだろう。
分からないけど、僕は彼に名一杯くっつく。
「俺な、恐かったんだ」
「何が?」
彼の指が、器用に僕の髪を絡め梳かしている。
「溺れるのが」
彼が言っていることはよく理解出来なかった。
だけど、何となく分かる気もした。
「そっか」
相変わらず雨は攻撃的―――ではなくて、いつの間にか柔らかい小雨になっていた。
土砂降りのときとは違う、リズム良く刻まれる音に、僕は耳を澄ます。
「ねえ」
僕は、彼の腕を掻い潜った。
「僕の息あげる」
「ん?」
彼は、首を傾げた。
「息を止めて」
――― ついでに、2人の時も止めて。
彼の後頭に手のひらを翳すと、ぐいっと顔を近づけた。
唇を当てると、彼の唇は説明のしようがないくらい柔らかくて、びっくりした。
じわじわと『幸せ』らしきものが、僕の体を、脳味噌を、呑み込んでいく。
細胞がざわざわと騒めき、血流の速さがどくどくと増していく。
「俺も、お前のこと、好きだから」
すうっと唇が離れて、彼が言った。
「そっか」
透き通るような涙が、透き通るような感情が、完全に一致した。
僕は、間違っているのだろうか?
多分、裏多分、きっと僕は間違っている。
だけど、そんな間違った僕等は、このままで、間違ったままでいたい。
間違った抱擁、間違ったキス、間違った愛。
だけど、間違いを正解にすればいい。
だから、だから。
―――― 愛したっていいじゃないか。