短いぼくの人生の感想
ぼく
梨味のアイスキャンディーは、ちょいと冷たすぎた。
木の香りが強すぎる棒とキャンディーをしゃぶりながら、唇の痺れに耐える。
―――あ、と思った瞬間にはキャンディーが崩れ落ち、紺色のパジャマを濃くした。
布越しに伝わってくるキャンディーの感触に虫酸が走る。
スーパーで特売だったティッシュを引き抜き、零れたキャンディーを拭いた。
べとべとする。
「んんー、うあああああああああああああああああっっっ」
彼、ふわは悲鳴にもとれるような溜息にもとれるような伸びをする。
ふわ、その名前にお似合いのふわふわした茶髪と朗らかな性格が特徴だ。
彼は鼻水を啜り、瞼をごしごしと執着に擦った
今日はちょっぴり風邪気味で、まあよくあるそんな日。
『ぶるる』とスマホが鳴って、彼はLINEの通知が来たことを悟った。
面倒臭い、だけどロックを解いてしまう。嗚呼。
「おーい!」
LINEの友達の数は、約100人。
そのうちの10人ほどがネットの友人だ。
因みに今、ふわのスマホを震わせたのは現実の友人。
「なにー(/・ω・)/」
「かわいw」
何が可愛いのだ、可愛いも糞もないだろう。
顔文字というのは、本人の本来の文正体を誤魔化すためにある邪道のようなものだ。
だから彼はあまり顔文字を使いたくはなかったのだが、どうしても周りに合わせると使わなければならない。
実際、使った方が受けが良い。そう、受けが良い。
「可愛くないってw、ところでなんだい」
用があるならちゃっちゃと済ませろ。
「今日、会えない?」
ふわは思いっきり溜息を空気中に追い出した。
梨の甘い香りに染まった二酸化炭素が、周りのからっとした酸素の居場所を奪う。
梨味のアイスキャンディーの棒を、ごみ箱に放り込む。
少しささくれた棒は、淵をころころと廻って中に吸い込まれた。
「んー、今風邪気味なんだ。ごめんねー!(´・_・`)」
今日は風邪気味だし、ちょっと熱い夏に出て行く勇気は持ち合わせていない。
断っても良いだろう。
それにしても、何でこんなに人間というものはうざったいのだろう。
「大丈夫?気を遣わせちゃってごめんね。じゃあまた今度(´;ω;`)お大事に」
「本当にごめん・・・。またね(´・ω・`)」
返事は来ない。戻って来ない。
むかむかと釈然としない感情を抑えながら、肩を下ろす。
こういうときは、何となく、生きる理由が分からなくなる。
死ぬ理由はない。
だけど、生きる理由がどこにも映し出されなくて、困惑する。
―――アイスキャンディーが死んでしまったせいで、ふわの繊細な額には細かい粒が浮いた。
何故か虚無、に近いような言葉ではないような、そんな感じで。
意味のない涙と意味のある汗がお互い、受け入れて混濁していくじわじわと。
ふわは何で自分が泣いているか分からなかったし、久しぶりに流した涙に混乱した。
泣いたのは、いつぶりだろう。
涙の存在にも、汗の存在にも、呆然としたまま気付くか気付かないかで。
「んんんんんんんんああああああああああああああああああああああ」
今度は伸びとはとれない、悲鳴のような嗚咽のような声が天井を破る。
部屋、と形容された。
世界、と形容された。
ただ1つの箱に埋まる人間のことを何というだろうか。
“飼い犬”
ふわも、総理大臣も、箱に入れられた飼い犬でしかない。
そんな悲観的なこうな、肯定的なような、そんな考えがぐるぐると目を回す。
熱があるせいだ。
こんな変な考えは、熱が引けば収まるだろう。
そんな風に想いながら、ふわは布団に潜り込んで小説のページを握る。
木の香りが強すぎる棒とキャンディーをしゃぶりながら、唇の痺れに耐える。
―――あ、と思った瞬間にはキャンディーが崩れ落ち、紺色のパジャマを濃くした。
布越しに伝わってくるキャンディーの感触に虫酸が走る。
スーパーで特売だったティッシュを引き抜き、零れたキャンディーを拭いた。
べとべとする。
「んんー、うあああああああああああああああああっっっ」
彼、ふわは悲鳴にもとれるような溜息にもとれるような伸びをする。
ふわ、その名前にお似合いのふわふわした茶髪と朗らかな性格が特徴だ。
彼は鼻水を啜り、瞼をごしごしと執着に擦った
今日はちょっぴり風邪気味で、まあよくあるそんな日。
『ぶるる』とスマホが鳴って、彼はLINEの通知が来たことを悟った。
面倒臭い、だけどロックを解いてしまう。嗚呼。
「おーい!」
LINEの友達の数は、約100人。
そのうちの10人ほどがネットの友人だ。
因みに今、ふわのスマホを震わせたのは現実の友人。
「なにー(/・ω・)/」
「かわいw」
何が可愛いのだ、可愛いも糞もないだろう。
顔文字というのは、本人の本来の文正体を誤魔化すためにある邪道のようなものだ。
だから彼はあまり顔文字を使いたくはなかったのだが、どうしても周りに合わせると使わなければならない。
実際、使った方が受けが良い。そう、受けが良い。
「可愛くないってw、ところでなんだい」
用があるならちゃっちゃと済ませろ。
「今日、会えない?」
ふわは思いっきり溜息を空気中に追い出した。
梨の甘い香りに染まった二酸化炭素が、周りのからっとした酸素の居場所を奪う。
梨味のアイスキャンディーの棒を、ごみ箱に放り込む。
少しささくれた棒は、淵をころころと廻って中に吸い込まれた。
「んー、今風邪気味なんだ。ごめんねー!(´・_・`)」
今日は風邪気味だし、ちょっと熱い夏に出て行く勇気は持ち合わせていない。
断っても良いだろう。
それにしても、何でこんなに人間というものはうざったいのだろう。
「大丈夫?気を遣わせちゃってごめんね。じゃあまた今度(´;ω;`)お大事に」
「本当にごめん・・・。またね(´・ω・`)」
返事は来ない。戻って来ない。
むかむかと釈然としない感情を抑えながら、肩を下ろす。
こういうときは、何となく、生きる理由が分からなくなる。
死ぬ理由はない。
だけど、生きる理由がどこにも映し出されなくて、困惑する。
―――アイスキャンディーが死んでしまったせいで、ふわの繊細な額には細かい粒が浮いた。
何故か虚無、に近いような言葉ではないような、そんな感じで。
意味のない涙と意味のある汗がお互い、受け入れて混濁していくじわじわと。
ふわは何で自分が泣いているか分からなかったし、久しぶりに流した涙に混乱した。
泣いたのは、いつぶりだろう。
涙の存在にも、汗の存在にも、呆然としたまま気付くか気付かないかで。
「んんんんんんんんああああああああああああああああああああああ」
今度は伸びとはとれない、悲鳴のような嗚咽のような声が天井を破る。
部屋、と形容された。
世界、と形容された。
ただ1つの箱に埋まる人間のことを何というだろうか。
“飼い犬”
ふわも、総理大臣も、箱に入れられた飼い犬でしかない。
そんな悲観的なこうな、肯定的なような、そんな考えがぐるぐると目を回す。
熱があるせいだ。
こんな変な考えは、熱が引けば収まるだろう。
そんな風に想いながら、ふわは布団に潜り込んで小説のページを握る。