los episodios de suyos
『――これはこれはドン・チェーロ!是非私の娘を妻にしてやってくれ!!』

『何を言うんだ君は!我が娘こそ彼にふさわしい!!』

『あら、ウチの娘が一番美しくってよ!ドン・チェーロもきっとお気に召されるわ。』



 ジェット機で数時間かけ、スペインへ。今日はローサのボスの就任式兼パーティーじゃないのか。すれ違う輩に部下達と共に愛想笑いを返しながら、そう思った。

 俺の秘書で側近のエンゾが『ボス、金に目が眩んだ奴らは怖いですね』と耳打ちしてきた。『あぁ』と返事をしてから会場に入る。ドア付近に居た執事がにこやかに近付いてきて、俺達を席へ案内してくれた。

 会場に、俺以外の日本人は見当たらなかった。皆が隣に居るエンゾのように、俺とは違う目や顔かたちをしている。エンゾが『ボス、日本人が自分一人だと不安ですか?』と言い、クスリと笑う。グレーのその目が、やけに俺を心配していた。

 こいつは俺が日本に居た時のことを知っている。俺がマフィアになったきっかけを、知っているのだ。何故なら、俺をスカウトしたのもイタリアに連れてきたのもエンゾなのだから。
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