los episodios de suyos
 ――あれから半年が経った。俺の隣には、あの日よりも気高く強く、そしてよりボスらしくなった彼女が居る。憎まれ口は相変わらずだが、たまには愛情を感じるようになった。俺達の関係は、日々変化している。



「……群、どうかしたの?」

「いや、何も……そろそろ寝るか?瞼が閉じかけてるぞ、未来。」

「……ええ、寝るわ。」



 絡みついてきた細い腕と、あの日と同じ清々しい色気を漂わせる香りに愛しさを覚える。真朱(しんしゅ)の唇に意地悪く音を立てて口付けてやれば、瞳の奥に微かな苛立ちと照れが窺えた。



「……アナタにはやっぱり、その香りが合うわね。」

「お前にしては嬉しいことを言ってくれるな。まだ抱かれたいのか?」

「……あまり余計なことを言うと撃つわよ?」

「冗談だ。命が惜しいからやめておく。」



 クスリと笑みを向けてやれば微笑が返ってくる。初対面で睨まれたのが信じられない程だ。視線を交わらせて数秒。どちらからともなく、呟く。



「……お休み。」



 意識が途切れる寸前に感じたのは、彼女に心を捕らえられた俺の体を包み込むような、マグノリアとアンバーの香りだった。



fin.
→後書き
< 25 / 61 >

この作品をシェア

pagetop