los episodios de suyos
「婚約者面でも命令でもねぇよ。あくまで“忠告”だ。イリスはそんなこと望んでねぇと思うけどな、俺は。」

「アナタに何が分かるのよ。大体、人を殺すのもアタシ達の仕事でしょ?感情で殺すなとは教えられたし、頼まれた仕事でもないわ。でも……コイツだけは生かしておけない……!」



 周りから見たアタシは、血走った目をしているただの危ない女だろう。とても威厳あるボスには見えないに違いない。でも、そんなことはどうだっていい。何としてでもコイツを殺さなければ……そう思っていた時、群がポツリと呟く。



「……イリスが泣くぞ?」

「……え?」

「お前の仕事はイリスも十分に分かってるだろ。だからこそ、自分のために人殺しなんてして欲しくないと思うぞ。
お前のそのグレーのスーツを薄汚い奴の血で染めるか?なら、俺は止めねぇよ。」



 ――ハッ、とした。イリスはアタシと違って、純粋で可憐な守りたくなる女の子。そんな彼女がアタシのような闇社会に生きる人間を認めるだなんて、成り行き上だったけど人生が変わった瞬間だった筈だ。そう思ったアタシの脳裏には、イリスを“拾った”日の光景が蘇ってきた。
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