los episodios de suyos
 その後、セリアのアパートで彼女と同棲することになった。二人きりの暮らしは、今までの張り詰めて血生臭い生活とは真逆で、温かくて穏やかだった。こんな光に溢れた毎日は初めてで、とてもくすぐったく感じたものだ。



『……式挙げなくて、本当に良かったのか?』

『ええ。こんな素敵な指輪をもらったから、もう十分よ。グレイったら、要らないって言ったのに買ってきてるんですものね。びっくりしたわ!』



 本当は、自分の家族や友人を呼んで式を開きたかっただろうに。オレの実家のことに配慮して、そう言ってくれたのだろう。“守られている”、と感じた。自分より弱くて儚い彼女に、とても強い力で支えられているような気がした。



『平凡だけど、毎日幸せだわ!』

『欲を言えば、一人くらいは子供が欲しいけどな。』

『あら、きっともうすぐよ。可愛い女の子だと良いわね。』



 ――セリアは予言通り、一ヶ月経たない内に産婦人科から妊娠の報告をもらってきた。身重の彼女を側で支え、出産に立ち会うことも出来た。生まれた女の子をアシュリーと名付け、大事に大事に育ててきた、そんな頃。運命の歯車が、再び動き出した。
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