los episodios de suyos
 彼女に代わって買い物に行った帰り道。静かだった街角で、急に銃声が響き渡った。直感で、何かあったのだと感じた。見知った顔がスペイン語訛りの英語を口にしているのを視界に入れ、やはり自分は正しかったのだと理解する。



『大人しくその子を返せ。その子は何も関係ないだろう。』

『こうなってまで余裕こいてんのか?天下のドン・ローサとやらは随分な男だな!』



 あれは確か、昔写真で見たマフィアのボスだ。ローサファミリーと言ったか。スペインで最もデカいマフィアじゃねぇか。何でイギリスに……そう思っていたのも束の間、幼い少女を人質に取って何かを要求している男が、対峙する2メートル近い男に銃を乱射し始めた。男も銃を出したと思いきや、撃ち返すのではなく“弾を相殺”している。全部綺麗に撃ち落としているのだ。彼の銃の腕前は神業だった。

 どちらが勝つのだろうと傍観していたオレだが、人質の少女がとても心配になった。可哀想に、大きな瞳からは今にも涙が溢れそうなのだ。何とかしてやりたい。そう思った時、大男の背後にもう一つの人影が見え、オレは大声で叫んでいた。



『そこのデカい兄ちゃん!後ろに気を付けろよ!!』
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