los episodios de suyos
 長身の男は背後の存在に気付き、敵のナイフを撃ち飛ばした。やっぱり凄ぇな。思わず吹いてしまった口笛をやめて、オレはポカンとしている卑怯者から少女を救うべく走り出した。

 足には昔から自信がある。隙だらけの男から小さな女の子を奪うのは容易いことで、男を気絶させる余裕もあった。地面に倒れたそいつを睨んでから、少女になるべく穏やかな顔を向ける。



『……大丈夫か?怖かったなぁ。』

『おにいちゃん、ありがとう!大きいおじちゃんもありがとね!!』



 少女はお礼を言って、何処かへ走っていった。“おにいちゃん”、か。すみませんね、童顔の40代で。



『……助かった。礼を言おう。』



 威圧感のある低い声が、頭上から聞こえる。顔を上げると、先程の長身の男だった。もう一人の敵はいつの間にか居なくなっている。



『いや、オレが勝手にやったことだ。あんた、ローサのボスなんだな。写真でしか見たことなかったが、やっぱり存在感たっぷりだぜ!』



 思わず笑ってしまったが、男も薄く笑みを浮かべてくれた。そういえば、早く買い物袋を持って帰らねぇと。セリアとアシュリーが、オレを待ってる。
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