los episodios de suyos
 ――翌日。いつものように、一番乗りで練習場に到着する。鍵を差し込んだ所で、私は異変に気付いた。

 右に回しても、カチッという音がしない。それは、“既にドアが開いている”ということを意味していた。

 鍵は今持ってきた。なのに、何故だろう。昨日、確かに鍵をかけた筈なのに……そんな考えが頭を巡ったけど、まずはすべきことがある。



『……大変だわ!!』



 急いでポケットの携帯を抜き取り、警察、次いで団長に電話をした。すぐに駆け付けた警察官達や団長、数人の団員と共に、荒らされた様子がないかどうかを調べる。すると、奥の金庫が壊されていて、中にあった現金が盗まれていることが分かった。

 最後に戸締まりをしたということで、私は警察から事情聴取を受けた。仲間達の視線の中での受け答えは、何となく妙な気分だった。



『鍵はきちんとかけたんですよね?かけ忘れて宿舎に戻ったということは?』

『ないわ!間違いなく戸締まりしたもの!』

『ふむ……勿論、外部の人間の犯行という可能性も考えられます。鍵を鑑識に回して、金庫に付着した指紋も調べさせてもらいましょう。』



 警官がそう言って、団長に許可を取ろうとした、その時だった。団員達の中から、こんな声が上がったのは。
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